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飯豊山(2,105.1m)登山記

はじめに

 飯豊山は100名山完登の登山です。8月初、月末の2回計画したが、天候不良予測のため回避した。本来であれば99座目の富士山が100座目となる予定だったが、飯豊山にその座を譲った。それに相応しく?、私にとってハードな山行となった。
 飯豊山の登山ル-トは数多くある。主な登山口として、新潟県側から温身平登山口(門内岳、北股岳、御西岳経由とダイグラ尾根経由)、山形県側から大日杉登山口(地蔵岳、種蒔山経由)、福島県側から奥川登山口と川入登山口がある。いずれのルートも往復20時間、累積高低3,000m近くの、アップダウンの数多くある体力を要する登山となる。私の選択は当初大日杉登山口だったが、住まいが安曇野市で足回りを考えて奥川登山口に変更した。往きを上ノ越経由(新ルート)、帰りを松平峠経由(新長坂ルート)とした。このコースも山と名の付くものが、巻岩山・疣岩山・三国岳・種蒔山とあり、アップダウンと岩盤帯は数知れない。
 高山植物は9月中旬だったので、盛りを過ぎた花が多かったが、予想より遥かに多い花に巡り会えた。特にウメバチソウ、ミヤマコゴメグサ、マツムシソウ、ヤマハココ、ハクサンボウフウは集落をなして群生していた。何より紅葉が始まっていて、遠く山の斜面を色取り、近く登山道の両サイドを染めていた。
 台風14号が気になったが、東シナ海に停滞していたので、東北地区には影響がなく登山日和だった。ただ山は天気だけでなく、山周辺の雲の発生状況によって、視界が大きく左右される。幸いなことに、飯豊山系主峰の飯豊山、大日岳は、はっきり視界に収めることが出来た。また日の入、御来光も拝めることが出来た。下山時、8時を過ぎた頃からガスで周りをすっかり覆われてしまったが、下山後半で登山には全く支障はなかった。飯豊山頂から雲海の上に顔を出す太陽に暫く見入る。周りは雲一つなく、大日岳の雄姿等を飽きることなく見渡す。
 飯豊山は山懐が広いため避難小屋が随所にある。ただ賄いが可能な避難小屋は切合しかなく、軽装とはゆかない。私は御来光が見たくて、山頂近い本山小屋に泊まる。9月中頃で日中は15度ぐらいあったが、夜は10度を割って3シーズン用のシュラフでは寒かった。

2021年9月15日(水) 晴
 弥平四郎登山口_680mMap (6:32 1時間44分) ⇒ 上ノ越_1,297m(8:16-8:25 1時間36分) ⇒ 疣岩分岐(10:01 19分) ⇒ 疣岩山_1,654m(10:20 1時間1分) ⇒ 三国岳_1,644m ⇒ 三国小屋(11:21-11:33 1時間30分) ⇒ 種蒔山_1,791m(13:03 20分) ⇒ 切合小屋_1,740m(13:28-13:53 35分) ⇒ 草履塚_1,908m(14:28 27分) ⇒ 御秘所道標_1,882m(14:55 24分) ⇒ 御前坂(15:19 51分) ⇒ 本山小屋_2,102m(16:10)
 前泊は時間がもったいないのと面倒なので、深夜0時3分に安曇野の自宅を出発する。安曇野ICに入って長野自動車道を進み、上信越自動車道、北陸自動車道、磐越自動車道を経由して津川ICを出る。その間305Kmで、栄PAで50分程仮眠して、阿賀野川PAで弥平四郎登山口を明るい時間の6時頃到着のため30分程時間調整をする。津川ICから国道49号、国道459号、県道383号を経由して西会津町奥川大字飯根集落まで進む。そこから未舗装の林道4.377Kmを、車に負担をかけないようゆっくり走らす。弥平四郎登山口のある祓川駐車場に6時10分に到着する。車が1台駐車していて、私のすぐ後にもう1台続いた。
 弥平四郎登山口から川の音を聞きながら暫く進むと、いきなり急坂になる。ブナと雑木の中をひたすら上っていく。高山植物がちらほら散見される。高度差617mを稼ぐと、鏡山との分岐上ノ越(1,297m)に着く。そこで一息つく。そこから尾根伝いに巻岩山を経由して、新長坂ルートとの合流点疣岩分岐に出る。新長坂ルートの猪鼻に下る急坂が目に入る。
 10分程行った獅子沼分岐付近
から高山植物が目立って多くなる。そこを鋭角に折れ曲がると、尾根上で時々開けた場所があるが、視界は今一つだ。さらに10分程行ったところに三等三角点が開けた登山道の中央に居座る。そこが疣岩山(1,654m)だ。天気がよければ、飯豊連峰の主峰を含め大展望所となるところだが、今はガスがあがって近回りしか見えない。そこから尾根上を1時間程ゆるやかに下って行くと三国小屋に達する。そこの道標に弥平四郎9.1Kmの表示があり、そんなに歩いたのか驚く。温度計は15℃を示していた。少し手前の三国岳は文字通り、福島県、新潟県、山形県の県境が交わる所だ。ここから登山道は新潟県、山形県の県境に沿って続く。
 三国小屋を左に進むと、急坂の下りとなる。20分程歩くと2段のハシゴがある。そこを超えると、種蒔山を隠す小ピ-クに向かって登山道が続く。更に高山植物が数を増す。岩稜帯を越えザレ場を上ると、笹原の中に種蒔の道標がある。そこに三国岳2.0Km、切合1.0Kmの表示がある。紅葉した樹林の中に延びる、穏やかな登山道を15分程進むと大日杉分岐の道標がある。石の積まれた広場を過ぎると、直ぐに切合小屋に着く。この小屋の住所は福島県喜多方市で、先ほど通過した三国小屋、これから行く本山小屋も喜多方市になっている。新潟県、山形県の県境のはずだが。
 切合小屋では小屋終いの準備か、従業員が忙しく働いていた。小屋の前に水飲み場があり、さっそく水の補給をし昼食時間を取る。ここは唯一の食事が提供される山小屋で利用客も多い。ビールがあったので躊躇なく購入する。乾いた喉にひんやりした苦みが通り過ぎる。エネルギ-の補給と疲れを少し回復して本山小屋へと向かう。笹原を抜けると、草履塚に向かって草原が広がる。
 草履塚に立つと、御秘所越しに御前坂の長い上り坂が見える。500m行くと白い帽子と涎掛けをした姥権現の石像が座していた。そこから100mで難所の岩稜帯の御秘所越えだ。
 御秘所の岩稜は上を見ながら登っていくので、時に最適な手足の置き場を誤り苦戦する場面があった。それほど高度差を感じず、恐怖感はなかった。そこを超すと、鞍部の御前坂まで少し下り、最後の長い瓦礫の上り坂が待ち構える。最高部付近に石垣
らしいものがあり、そこに向かって登山道が続いている。寝不足もあり、この坂は徐々に体の負担になる。なんとかそこに辿り着くと、本山小屋がキャンプ場の先の小高い所に見える。まだかと一瞬立ち止まる。
 キャンプ場を過ぎて、小屋前の最後の坂が長く感じる。本山小屋に着くと、しばし小屋前のベンチに荷をおろし一息つく。小屋には先客はおらず、1階の左奥に場所を確保する。暫くすると4人連れが訪れ、2階へと上がっていった。さっそく夕食の準備をして、ゆっくり寛ぐ。
 飯豊山神社の横を通り、開けた高台に立つ。そこから飯豊山が穏やかな稜線の先に見える。左側に少し雲がかかっているが、雪渓の上に大日岳が認められる。右側に大グラ尾根に続く三角の宝珠山が雲を纏っている。
 小屋に戻り、日の入まで待つ。再び高台に行くと、雲がすっかりなくなり、草木は夕日に染まり、飯豊連峰の山々が影絵のように稜線を描いている。飯豊山の左側の雲海の中に、深紅の太陽がゆっくり沈んでいく。17時55分過ぎに、太陽が西の空に消え、闇が徐々に深くなっていく。小屋に戻ると、何もすることがないので、直ぐに横になる。

2021年9月16日(木) 晴
 本山小屋_2,102m(4:55 11分) ⇒ 飯豊山_2,102m(5:06-5:47 15分) ⇒ 本山小屋(6:02)
本山小屋(6:50 28分) ⇒ 御前坂(7:18 16分) ⇒ 御秘所案内板(7:34 23分) ⇒ 草履塚(7:57 20分) ⇒ 切合小屋(8:17-8:24 21分) ⇒ 種蒔山(8:45 58分) ⇒ 三国小屋(9:43-9:57 43分) ⇒ 疣岩山(10:40 11分) ⇒ 疣岩分岐(10:51 2時間8分) ⇒ 祓川山荘(12:59 20分) ⇒ 弥平四郎登山口(13:19)

 3時頃から2階に陣取った4人の若者の話声で寝れる状態でなくなった。昨晩早出するのでお願いしますと言われていたので、怒るに怒れない。こちらも既に寒さで目覚めていたので、我慢してご来光の時間まで辛抱する。日の出時間が5時24分だったので、飯豊山まで上る時間20分を加味して4時55分に本山小屋を出発する。11分後の5時6分に飯豊山山頂(2,105.1m)に早すぎる登頂となった。既に若者4人グル-プはカメラを三脚にセットして待機していた。相変わらず賑やかに話が弾んでいた。飯豊山頂は雲一つなく、大日岳は手に取る目先に聳える。下界は雲海の下に沈んでいる。朝日連峰が雲海の上に連なる。風は微風なので辛抱出来るが、なかなか太陽が顔を覗かせない。雲が地平線の上に張り出しているので、結局御来光は5時30分頃になった。それでも太陽の光の帯が流れた一瞬は感動ものだ。しばし山頂で、この上ない絶景を堪能し、惜しみつつ下山する。
 本山小屋に戻り朝食を摂る。御前坂まで30分程で下りきる。昨日の息絶え絶えの上りとは雲泥の相違だ。そこから御秘所までなだらかなハイマツ帯を進むと、御秘所と言われるクサリの岩稜帯だ。往きはルートが良く解らず苦戦したが、下りは上から見通せるので難なく通過出来た。御秘所を超え、姥権現横を通り、なだらかな登山道を上ると笹原の草履塚だ。見納めとなる飯豊山を振り返り、切合小屋に向かう。笹原と雑木に囲まれた登山道を暫く進むと、やがて切合小屋が小さく見えて来る。開けた広場の先の笹原を通り抜けると切合小屋にぶつかる。切合小屋では、まだ従業員が忙しく働いていた。しばし休憩の後、水を補給して出発する。
 ここから三国小屋までは、一旦種蒔山まで50m上り、そこから150m程の高度差を小さなアップダウンと岩盤帯を繰り返して下るので思った以上に体力を使う。種蒔山を過ぎた頃から、ガスが強まり視界が霞んでくる。2段のハシゴを過ぎると、暫くしてようやく三国小屋に着く。三国小屋前に2人の登山者が休憩していた。ここまで単独と数組の登山者とまれにすれ違った。水分の補給を済ますと、直ぐに疣岩山に向かって上り始める。ガスっているので、ただひたすら歩くのみだ。
 疣岩分岐から当初計画通り、松平峠方向に進む。砂岩状の急斜面をスリップに注意して下っていく。直ぐに猪鼻と呼ばれるところを通り、30分程で松平峠と思われる高みを超える。尾根を下っていると、大きな水音がしてくる。左側に滝状の一筋の折線が一気に下っている。行く手に長坂峰が見え、一瞬あれを登るのかと思う。その裾野を右に巻いて十森へと続く。そこから長い長い単調な見栄えのしない景色の中を、祓川山荘まで下って行く。ここにきて2日間の寝不足がもろに足にくる。だましだまし、超ゆっくりペースで祓川山荘に辿り着く。その付近はブナが密生していた。祓川山荘前後は歩き易い登山道だったが、その先急激に川に向かって下って行った。祓川まで下りると、りっぱな橋が対岸まで架かっていた。橋を渡ると、最後の急坂が待っていた。大きな看板のある林道に出ると、祓川駐車場は直ぐそこだ。13時19分到着で出発から6時間半程だったので、思ったより早く着いた。
 これから自宅までの長い運転が待っている。登山後の楽しみの温泉を捜すと、津川IC近くに清川高原保養センタ-を見つけた。そこはつるつるの温泉で、汗を流し疲れを取る。津川ICに入り、途中の北陸自動車道米山PAで、夕食と休憩時間にあてる。自宅に20時過ぎに無事帰還する。


高山植物

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アカモノ


撮影日:2021年9月16日
撮影地:飯豊山系_種蒔山付近
科/属:ツツジ/シラタマノキ
特 徴:花冠鐘形で5裂、やや紅色

アキノキリンソウ


撮影日:2021年9月16日
撮影地:切合小屋付近
科/属:キク/アキノキリンソウ
特 徴:穂状花序

イワイチョウ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:三国小屋付近
科/属:ミツガシワ/イワイチョウ
特 徴:花は5裂、黄葉化

ウツギ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:三国小屋付近
科/属:アジサイ/ウツギ
特 徴:多花、葉対生

ウメバチソウ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:ユキノシタ/ウメバチソウ
特 徴:白色5弁花を一輪

ウラジロナナカマド


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:バラ/ナナカマド
特 徴: 葉裏白み、半分鋸歯

エゾシオガマ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:ゴマノハグサ/シオガマギク
特 徴:ねじれ

オタカラコウ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:キク/メタカラコウ
特 徴:舌状花5~9個

オニアザミ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:キク/アザミ
特 徴:花下向き

オヤマリンドウ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:リンドウ/リンドウ
特 徴:つぼみ状、複数花

カンチコウゾリナ


撮影日:2021年9月16日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:キク/コウゾリナ
特 徴:剛毛

クロトウヒレン


撮影日:2021年9月15日
撮影地:三国小屋付近
科/属:キク/トウヒレン
特 徴:剛毛

コウメバチソウ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系_疣岩山付近
科/属:ユキノシタ/ウメバチソウ
特 徴:白色5弁花を一輪

コメツツジ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:ツツジ/ツツジ
特 徴:2-5個の散房状の花

コロヅル


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系_疣岩分岐近
科/属:ニシキギ/コウゾリナ
特 徴:剛毛

シロバナニガナ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:疣岩山~種蒔山
科/属:キク/ニガナ
特 徴:舌状花で8~10枚

センジュガンピ


撮影日:2021年9月16日
撮影地:飯豊山系_疣岩分岐下
科/属:ナデシコ/センノウ
特 徴:葉は対生、花は2裂

タカネマツムシソウ


撮影日:2021年9月16日
撮影地:飯豊山系_草履塚付近
科/属:マツムシソウ/マツムシソウ
特 徴:

チングルマ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:バラ/ダイコンソウ
特 徴:綿毛

ツルリンドウ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系_ 疣岩山付近
科/属:リドウ/ツルリンドウ
特 徴:鐘型花

ハクサンフウロ


撮影日:2021年9月16日
撮影地:飯豊山系_姥権現付近
科/属:フウロソウ/フウロソウ
特 徴:5花弁、5裂葉

ハクサンボウフウ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:セリ/カワラボウフウ
特 徴:茎は直立し分枝

ホタルブクロ


撮影日:2021年9月16日
撮影地:飯豊山系_2段ハシゴ付近
科/属:キキョウ/ホタルブクロ
特 徴:鐘状

ミヤマクルマバナ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系_2段ハシゴ付近
科/属:シソ/トウバナ
特 徴: 花は唇形、葉脈目立つ

ミヤマコウゾリナ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:切合小屋付近
科/属:キク/コウゾリナ
特 徴:剛毛

ミヤマコゴメグサ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:ハマウツボ/コゴメグサ
特 徴:葉の先が丸い

ミヤマダイコンソウ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:バラ/ダイコンソウ
特 徴:黄色い5弁花

ミヤマトリカブト


撮影日:2021年9月16日
撮影地:飯豊山系_御秘所付近
科/属:キンポウゲ/トリカブト
特 徴:上萼片は円錐形

ヤマハハコ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系各所
科/属:キク/ヤマハハコ
特 徴:多数の黄色頭花

ヨツバシオガマ


撮影日:2021年9月15日
撮影地:飯豊山系_疣岩山付近
科/属:ゴマノハグサ/シオガマギク
特 徴:四葉&花

立ち寄り温泉
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津川高原保養センタ-(0254-92-5530)Map

自然に囲まれた高台にあり、浴室から阿賀野川が見える。温泉はしっとりと肌に馴染み、美肌の湯として親しまれている。

 ・所在地:新潟県東蒲原郡阿賀町京ノ瀬4851
 ・浴室:内風呂
 ・方式:かけ流し
 ・泉質:アルカリ性単純温泉(39℃)
 ・営業時間:10:00~20:00(受付19:30)
 ・休館日:水曜日(祝日の場合翌日)
 ・入湯料:大人:500円
 ・割引:17時~400円
 ・観光スポット:麒麟山、角神不動滝
 ・入浴日:2021年9月16日