静岡県下田市須崎半島の先端に建つ爪木崎灯台は、伊豆半島を代表する景勝地・爪木崎の象徴的存在であり、太平洋を望む白亜の灯台として広く知られている。灯台が位置する爪木崎は、富士箱根伊豆国立公園に属し、透明度の高い海、荒々しい岩礁、そして季節ごとに変化する植生が織りなす自然美に恵まれている。灯台はその中心的ランドマークとして、景観と航路安全の両面で重要な役割を果たしてきた。
爪木崎灯台が初めて点灯したのは1937年(昭和12年)4月1日である。塔高は17メートル、灯りの高さ(平均海面から灯火までの高さ)は38メートルに達し、光達距離は12海里とされる。灯質は「単閃白光、毎4秒に1閃光(Fl W 4s)」で、伊豆半島東岸を航行する船舶にとって欠かせない航路標識として機能している。現在はLED灯器が採用されており、近代化が進む中でもその端正な姿は変わらず、訪れる人々に「灯台らしい灯台」として親しまれている。
灯台が建つ須崎半島は、伊豆半島の地質的特徴を象徴する場所でもある。周辺には、地下深くのマグマが冷えて収縮することで形成された六角形の柱状節理が広がり、地元では「俵磯」と呼ばれている。これは伊豆半島がかつて火山島として南方から本州へ衝突・付加した歴史を物語る貴重な地形であり、静岡県指定文化財にもなっている。灯台周辺を散策するだけで、地球のダイナミックな営みを体感できる点も、爪木崎の大きな魅力である。
また、爪木崎は冬の水仙の名所として全国的に知られている。毎年12月下旬から1月にかけて約300万本の野水仙が咲き誇り、灯台へ続く遊歩道一帯が甘い香りと白い花で満たされる。この時期には「水仙まつり」も開催され、多くの観光客が訪れる。夏は海水浴、秋は西洋ススキ、冬は水仙と、四季折々の自然が灯台周辺を彩り、訪れるたびに異なる表情を見せる。
灯台周辺は「爪木崎自然公園」として整備されており、遊歩道を歩けば伊豆七島を望む雄大な景観が広がる。晴れた日には利島・新島・式根島などが遠望でき、太平洋の深い青と白い灯台のコントラストが美しい。灯台自体は内部公開されていないものの、外観をさまざまな角度から眺められるため、写真愛好家にも人気が高い。
さらに、爪木崎灯台は「恋する灯台プロジェクト」にも認定されている。これは日本財団と日本ロマンチスト協会が全国の灯台を「ロマンスの聖地」として再価値化する取り組みで、爪木崎灯台はその象徴的な白いシルエットと周囲の自然美が高く評価された。灯台へ続く細道を歩きながら、海風と季節の花々に包まれる体験は、訪れる人々に特別な時間を提供している。

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