(概要)
通潤橋(つうじゅんきょう)は、熊本県上益城郡山都町にある石造アーチ水路橋で、1854(安政元)年に完成した江戸時代を代表する土木遺産である。阿蘇外輪山の南側に広がる白糸台地は水に乏しく、農民は長く干ばつに苦しんでいた。そこで惣庄屋・布田保之助らが中心となり、対岸の笹原川から水を引く壮大な灌漑計画が立てられ、この橋が築かれた。
橋は長さ約78メートル、高さ約21メートル、幅約6メートルの単アーチ構造で、内部に石積みの水路管を通している。最大の特徴は、堆積した土砂を洗い流すために設けられた放水口で、豪快に水が噴き出す光景は「通潤橋放水」として全国的に知られる。精巧な石組みと水圧を利用した仕組みは、当時の高度な技術と知恵を物語る。
完成により白糸台地には豊かな水がもたらされ、棚田が開かれ米作が安定した。橋は単なる施設ではなく、地域の命を支えた“水の道”であり、住民の誇りとなった。現在も周辺には円形分水や用水路網が残り、近世農村の水利システムを伝えている。
春は桜と新緑、夏は深い緑、秋は黄金色の稲穂、冬は静かな里山と、四季の風景に石橋の姿が映える。放水日は多くの見物客でにぎわい、祭りや伝統芸能も行われる。2016年の熊本地震で被害を受けたが、地域と技術者の努力により修復が進み、再び水を放つ姿がよみがえった。
通潤橋は、日本最大級の石造アーチ水路橋として国の重要文化財に指定されている。自然の地形を読み、人の力を結集して水を導いた先人の志は、現代にも深い感動を与える。清らかな水と石のアーチが織りなす景観は、熊本の歴史と農の営みを静かに語り続けている。
(アクセス)
車では、熊本市中心部から約40kmで1時間程です。阿蘇高森から40分程です。駐車場は通潤橋駐車場や無料の道の駅通潤橋にあります。熊本からバス便はありますが、便数が少なく時間がかかります。➠ Map

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